本サイトで連載していただいた、工藤庸子先生の「人文学の遠めがね」が今月、書籍として刊行になりました。
工藤庸子『女たちの声』 B6判 上製 200頁 本体価格2,400円+税 ISBN 978-4-904702-77-2 C0095 ブックデザイン:小川順子 ★書籍の詳細ページおよびご購入はこちらへ 工藤庸子先生は、仏文学・ヨーロッパ地域文化の研究者として、東京大学の教養学部で長らく教鞭をとってきました。放送大学教員をへて、現在は東京大学名誉教授ですが、近年、非常に旺盛な執筆活動をおこなっています。ヨーロッパ文明批判三部作(『ヨーロッパ文明批判序説』『近代ヨーロッパ宗教文化論』『評伝 スタール夫人と近代ヨーロッパ』いずれも東京大学出版会)をはじめ、昨年暮れには新著『政治に口出しする女はお嫌いですか?』(勁草書房)を刊行。翻訳書も多数出版されています。 本書は、本サイトで連載されたブログ15編に、書下ろし100枚を加えたエッセイ集です。フランス近代のサロンにおける女たちの「語られた言葉」が持つ歴史的・社会的意味を、長年にわたって問いつづけてきた著者が、現代日本のアクチュアルな出来事に呼応し、革命的な女たちの「語られた言葉」をひもときながら、人文系の学問的思考に刻印された性差に切り込みます。そこでは、「男女平等世界ランキング」が最下位に近い日本の現状が、いかに学問的な言語環境とも結びついているかが露わになります。 東京大学で採用された女性の教員として黎明期にあたる工藤先生みずからが、実体験としてもつ経験そのものも貴重な証言でもあります。現代の女性をとりまく環境はかなり改善されたものの、それでも実のところまったく当たり前のことが実現していないことがありありと浮かびあがってきます。「女性」という視点で書かれた大江健三郎論もかつてなかった論考です。 高知在住のデザイナー、梅原真さん最新シゴト集『おいしいデ』がさまさまなメディアで取り上げられています。
8月から9月にかけて、共同通信の配信でインタビューが全国21紙で掲載されました(確認できた範囲なので、もっとかも!)。 ▶︎地方の力 デザインで引き出す(共同通信配信) そして、梅原さんが多大なる影響を受け、リスペクトしてやまない大橋歩さんが!、フリーマガジン『LITTLE』の創刊号で、『おいしいデ』について書いてくださいました。嬉しいー 他の記事もおいしそー ▶︎フリーマガジン『LITTLE』創刊号(8月20日発行、イオグラフィック) 朝日新聞のWEBメディア「好書好日(こうしょこうじつ)」でインタビューが掲載されました。記事は、以前高知支局におられた記者、浜田奈美さん。 ▶︎「好書好日(こうしょこうじつ)」:「もうアカン」一次産業をデザインで大逆転 梅原真さんのシゴト集「おいしいデ」(9月12日) 浜田さんのインタビューは、『AERA』でも別バージョンで掲載されています。 ▶︎『AERA』「この人この本」(2018年10月8日号) 梅原さんのデザインは、どれもとってもおいしいデ! 梅原さんがデザインを引き受けるということは、すなわち安心安全でおいしいもの。 梅印の商品、どれも買いたくなりますね。 最後に。9月28日、高知で『おいしいデ』刊行記念パーティが開かれました。なんと、全国から「おいしいデ」の生産者と生産物がつどった盛大な会に。残念ながら羽鳥書店は都合により参加できず、幹事の畠中智子さんの報告ブログをひたすらうらやましく見ました。そのスコブル楽しそうな様子は、こちらから。 ◎梅原真『おいしいデ』 ◎限定のてぬきうどんセットもあります 現代アーティスト・鴻池朋子さんの個展が、秋田ではじまっています。
秋田県立近代美術館 「鴻池朋子 ハンターギャザラー」 2018年9月15日〜11月25日 場所は、奥羽山脈を背後にいだく、秋田県横手市。この東北の背骨の麓で、鴻池さんはまた新たな世界を切り開いています。ここでしか体感できないものを、ぜひ会場であじわってください。 羽鳥書店では、鴻池さんの最新作品集を準備しています。オープン前の会場で、永禮賢さん に写真をとっていただきました。永禮さんは、鴻池さんの第一作品集『インタートラベラー 死者と遊ぶ人』でも写真を撮ってくださった方で、羽鳥書店からは『mind encode』という写真集も出されています。 永禮賢 nagare satoshi オフィシャルサイト 永禮賢『mind encode』 鴻池朋子さんと、永禮さんの写真と、「根源的暴力」以来チームを組んでいるデザイナーの小川順子さんとで、『ハンターギャザラー』はどんな姿にできあがるのか、ぜひお楽しみに! オープン前の撮影の様子をちょっとだけお見せします。会場の様子は、鴻池朋子オフィシャルのSNSをシェアしていきますので、ご覧ください。(リスの剥製は鴻池さんの作品ではありませんが、会場のどこかにいます)。 FB:鴻池朋チェイサー Twitter:鴻池朋子オフィシャル @tomokokonoike Instagram:鴻池朋子オフィシャル *作品集『ハンターギャザラー』は10月下旬に会場先行発売、11月初旬に一般発売の予定です。 前回ご紹介した『論集 蓮實重彦』の編者である工藤庸子さんは、当サイトで「人文学の遠めがね」を連載中です。その第11、12回、13回の3回に分けて「大江健三郎と女性」と題した論考を寄せてくださいました。
11. 大江健三郎と女性(1)──contemporaineであるということ 12. 大江健三郎と女性(2)── 政治少年のéjaculation 13. 大江健三郎と女性(3)──「全小説」とfictionとしての「小説家」」 第11回の冒頭を少し引用します。 フローベールを語らずしてフランス第二帝政を語れるか。プルーストやコレットぬきで第三共和政を描けるか。ウルフを視野に入れずに女性と文学という主題に接近できるのか。だとしたら? そう、大江健三郎を恭しく棚上げにしたまま、日本の戦後を展望できるはずはありません。昭和と平成を束にして生きぬいた作家の「全小説」の刊行が、この7月に始まり、元号の改まった年の秋に完結するとのこと(元号などは無意味な作為だと切って捨てられぬ精神風土や論争が、じっさい日本にはあるのだから、なおのこと)。『読売新聞』はじめ大手日刊紙が著名な作家や評論家のエッセイを掲載し、『群像』8月号には「筒井康隆×蓮實重彦対談」が組まれています。この対談で提示されたキーワード「同時代人」を手掛かりにしたいと思うのですけれど‥‥‥。 とはいえ「あなたは大江健三郎の同時代人ですか?」という問いが、わたしに向けて発されることは、およそ想像すらできません。大江健三郎と対談参加者、これら御三方はほぼ同年齢。それより10歳近く年下ではあるものの、ここで年齢差は理由ではなくて、そもそも「同時代」などという大仰なものについて女性が真剣に考え語ることは、絶対的に期待されない社会の片隅で、昔のわたしは生き始めたという自覚があるためでしょう。 「あなたは大江健三郎のcontemporaineですか?」という問いであれば、話は別、という気がします。わたしにとって外国語の語彙を習得することは、日本社会の厳めしさ、居心地の悪さからの脱出であり、解放の経験でもありました。contemporaineというのはプルースト『失われた時を求めて』からの借用です。(‥‥‥) 「大江健三郎と女性」というテーマで読み解く刺激的な大江論。つづきはぜひ連載ページをお読みください。また、冒頭取り上げられている『群像』8月号に掲載された「筒井康隆×蓮實重彦対談」は歴史的かつ貴重な対談です。こちらもぜひ! 『ユリイカ』2018年9月号(8月27日発売) 特集*濱口竜介――『PASSION』『ハッピーアワー』『寝ても覚めても』…映画監督という営為 この特集号では、濱口監督の前作『ハッピーアワー』について1冊を書き下ろした三浦哲哉さんが、監督の次くらいに(と言いたくなるほど)大活躍されています。目次を見ただけでもお名前を抽出すると、以下のように登場されています。 ■対談 「さいわいなことに、濱口さんも役者が好きなんです」――『寝ても覚めても』をめぐる三つの問題点 / 濱口竜介+蓮實重彥(取材・構成=三浦哲哉) ■『寝ても覚めても』と〈映画〉 串橋がチェーホフの戯曲の一節を暗唱するとき、ひとり驚いていない朝子の目 / 三浦哲哉 ■トークイベント再録 『ハッピーアワー』論の奇妙な冒険 / 濱口竜介+三浦哲哉 ■インタビュー――『ハッピーアワー』を録る 特別な瞬間の響き / 松野泉(聞き手・構成=三浦哲哉) 濱口監督の新作『寝ても覚めても』は9月1日より上映が始まっており、満席が相次いでいるようです。新作をぜひ映画館で楽しんでいただき、前作『ハッピーアワー』をまだご覧になっていない方はぜひBlue-rayで見て堪能し、そして、三浦哲哉さんの渾身の書き下ろし『『ハッピーアワー』論』を読んでみてください。 この号には、蓮實重彥さんが濱口監督をインタビューされています。
「さいわいなことに、濱口さんも役者が好きなんです」――『寝ても覚めても』をめぐる三つの問題点 / 濱口竜介+蓮實重彥(取材・構成=三浦哲哉) また、蓮實さんは、『新潮』2018年10月号(9月7日発売)に『寝ても覚めても』論を寄稿されています。 選ぶことの苛酷さについて――濱口竜介監督『寝ても覚めても』論/蓮實重彥 蓮實さんは、いま日本映画は第三期黄金時代を迎えていると言います。その代表格に、濱口竜介さんほか、三宅唱さん、小森はるかさんなどが挙げられています。三宅唱監督も新作『きみの鳥はうたえる』が公開されたばかり(9/1〜)。この『新潮』にも「貧しさと眩しさ――『きみの鳥はうたえる』について/三宅 唱」を寄稿されています。 濱口監督『寝ても覚めても』と三宅監督『きみの鳥はうたえる』は、『NOBODY』issue47 特集:「映画の絶対的な新しさのために」の2大特集としてとりあげられており、小森はるかさんも寄稿。なおかつ、三浦哲哉さんの『ハッピーアワー論』をめぐるインタビューも掲載された、非常に濃い内容となっています。これからの日本映画をひもとく貴重な一冊! そして、日本映画の第三期黄金時代を支える映画監督や映画評論家が、工藤庸子[編]『論集 蓮實重彦』に集結していることも見逃せません。2016年、蓮實重彦さんの『伯爵夫人』が三島由紀夫賞を受賞した直後に刊行された本書は、蓮實重彦の大いなる影響を受け、ただし、直接の教え子ではない「27名の非嫡出子」による論集です。上記で紹介した方々だけでも、以下のような文章を寄せてくださっています。 映画からこぼれ落ちそうになる男/三浦哲哉 遭遇と動揺/濱口竜介 胸の高鳴りをおさえながら/三宅 唱 眼差しに導かれて/小森はるか 追記(10月5日):『論集 蓮實重彦』では、映画監督の執筆者に、なんとペドロ・コスタ監督も。映画批評・映画研究では、三浦さん以外にも、クリス・フジワラさん、エイドリアン・マーティンさん、リチャード・I・スヘンスキさん、イム・ジェチョルさん、入江哲朗さんと、すごいラインナップです。 『ユリイカ』特集=蓮實重彦(2017年10月臨時増刊号)とあわせて、必読です。もちろん、工藤庸子・蓮實重彦『〈淫靡さ〉について』も併読することをおススメします。 |
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