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​​東日本大震災(2011年3月11日)の震源地に最も近かった宮城県の牡鹿(おしか)半島。その付け根に位置する女川町を中心に、半島一帯を取材してまわる記者の出会いの日々を綴ります。老親の帰りを待つ人がいます。幼子の帰りを待つ人がいます。ここに暮らす人々の思いに少しでも近づけますように。──小野智美

第23便 漁師さん親子と<3> 文学碑

9/26/2013

 

 震災から2年半。いまも女川港の近くに、あの日の記憶をとどめる、3棟の倒壊ビルが残っています。全国から視察に来る人々の多くは、この3棟の前に立ち寄ります。その人々は気づいていたでしょうか。3棟のそばにある文学碑に。
 
 高村光太郎の文学碑です。1931(昭和6)年、光太郎は三陸沿岸の旅の中で女川港も訪ね、素描画や散文、詩を書き残しました。のちに、それを知って感激した町の青年が立ち上がりました。養鶏業を営みながら画業にも励み、町の広報誌にも素描画と散文を連載していた貝廣(かい・ひろし)さんです。貝さんが中心になり、1986年から一口100円の募金活動を始めました。3721人から計約1千万円が集まり、91年、3基の碑が建ちました。
 
 2011年3月11日。1基は流失しましたが、1基は向きを変えながらも津波に耐えました。もう1基、幅は10メートルで、高さは2メートルの碑は、波に引き倒され、天を仰ぎながらも、大地を離れませんでした。写真は、昨年夏、あの日のままに残る2基です。

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第22便 漁師さん親子と<2> 大王様

9/1/2013

 

 昨年暮れの夜。女川町の仮設住宅に漁師さん親子を訪ねました。玄関のドアを開けたら、そこは台所。ドアの前のマット1枚分が、玄関スペース。約30平方メートルの2DKです。
 
 居間から可愛い声がします。
 「パパ、お水ちょうだい」
 漁師さんが、水を注いだコップを持ってきます。中学生の兄と小学生の姉が笑います。
 「大王って呼んでいるんだ」。兄が教えてくれました。
 「だって、のど、かわいたんだもん」
 保育園児の大王さまは、澄ましたお顔。次に、漁師さんは、大王さまの前に器を差し出します。サイコロ状に小さく切った焼き餅に納豆をからめてあります。「あーん」。大王さまのお口へ、漁師さんが焼き餅を運びます。次はお薬。大王さまはお風邪なのです。咳き込みました。漁師さんはすばやく察知して、器を差し出し、もどしてしまった子の背中をさすります。器をのぞいて「薬も出ちゃったかなあ」と漁師さん。でも、すっきりしたよう。大王さまは、ケロリとしたお顔で、私が控える、ちゃぶ台へ。
 
 その夜、私は折り紙を持参しました。年の瀬の新聞に載せるため、子どもたちに年賀状を作ってもらいます。前の晩、はがきを手に参上しますと、大王さまが黒ペンで一気に仕上げてくれました。現代美術の巨匠ジャクソン・ポロックのような絵です。すてきですね。でも、きょうだい3人で仕上げてもらいたいの。どうしたらいいかな。思いついたのが、ちぎり絵でした。大王さまは折り紙を手に「わたし、ピンク、好き。水色、好き」。
 
 ふだん大王さまは、兄を「にぃに」、姉を「ねぇね」と呼びます。ねぇねは、黙々と、ちぎり絵で花畑を描いています。大王さまもちぎってはみたものの、すぐにあきてしまい、ハサミで切って、テープで貼って……。ふと、大王さまが、ねぇねに目を向けると、はがきの上に色とりどりの見事な花畑が出来上がりつつあります。
 「あれ、わたしも、ほしい」
 大王さまはちょっと泣き声です。

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    Author

    小野智美(おの さとみ)
    朝日新聞社員。1965年名古屋市生まれ。88年、早稲田大学第一文学部を卒業後、朝日新聞社に入社。静岡支局、長野支局、政治部、アエラ編集部などを経て、2005年に新潟総局、07年に佐渡支局。08年から東京本社。2011年9月から2014年8月まで仙台総局。宮城県女川町などを担当。現在、東京本社世論調査室員。


    ​*著書

    小野智美『50とよばれたトキ──飼育員たちとの日々』(羽鳥書店、2012年)
    小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(羽鳥書店、2012年)
    『石巻だより』(合本)通巻1-12号(2016年)

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