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​​東日本大震災(2011年3月11日)の震源地に最も近かった宮城県の牡鹿(おしか)半島。その付け根に位置する女川町を中心に、半島一帯を取材してまわる記者の出会いの日々を綴ります。老親の帰りを待つ人がいます。幼子の帰りを待つ人がいます。ここに暮らす人々の思いに少しでも近づけますように。──小野智美

第2便 健太さんの家族<2> 思い出の魚

10/23/2012

 

 牡鹿半島で取材を始めて1年が過ぎました。
 
 ふだんの移動は車です。1年間の走行距離は3万キロ近くになりました。かつて新潟県の佐渡島に駐在した頃、1年間の走行距離は1万キロほどでした。佐渡の3倍も走っているのに、ここには今もまだ取材していない漁港があり、焦ります。
 
 ほぼ毎日のように足を運ぶのは、女川港です。港そばの高台に町役場、小中学校、仮設住宅の団地がありますから。私が通い始めた昨年秋、港のわきで魚市場も再開していました。付近に倒壊した建物しか残っていない港の一画で、人々を呼び戻す魚市場。町の底力を感じます。
 
 その市場でヒョウタンのような姿の魚に出合いました。何という魚ですか、と尋ねると、仲買人の魚屋さんも「初めて見るね」。なんと、そんなことがあるのですね。結局、「食べ方がわからないからだめだ」と海へ返すことになりました。その前に撮らせていただいた写真がこちらです。親切にしてくださった魚屋さんも、後継ぎの長男夫婦を津波でなくしました。長男は今も行方不明です。

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第1便 健太さんの家族<1> 2度目の秋

10/17/2012

 

​ みなさま、こんにちは。宮城県の牡鹿半島からお便りしています。ここ牡鹿半島も10月、長い長い酷暑からようやく解放されました。やわらかい秋の日差しにほっと息をついていましたら、健太さんのお父さんから、こんなお便りをいただきました。
 
 「日暮れが早くなり、涼しくなってくると、いやな気持ちになりますね」
 思い出すのです。春まだ浅く日暮れも早かった2011年3月11日を。
 
 長男の健太さんは25歳でした。東京の大学を卒業後、生まれ育った宮城県に戻り、全国屈指の地方銀行、七十七銀行に就職しました。
 
 最初は仙台市の支店で働き、2010年春、女川町の女川支店へ転勤しました。あの日も、女川港そばの支店にいました。12人の行員と共に2階建ての支店の屋上へ避難しましたが、津波が到達します。次の週末には恋人を両親に紹介する予定でした。
 
 牡鹿半島で取材を始めて1年が過ぎ、2度目の秋を迎えました。自戒を繰り返す毎日です。忘れている時があるのです。めぐる季節に、心浮き立つ人もいれば、心が沈む人もいることを。

さらに詳しく

小野智美記者の女川だより | 目 次 |

10/1/2012

 
第1便~4便 健太さんの家族
<1> 2度目の秋
<2> 思い出の魚
<3> ピンクの机
<4> 高校球児へ

第5便~8便 花屋さん一家と
<1> 花届ける日
<2> ゼラニウム 
<3> 父の双眼鏡
<4> 海風と涙と

第9便~12便 美智子さん姉妹
<1> 返信を待つ
<2> 元日に思う
<3> 夕方に祈る
<4> おねえさん 

第13便~16便 床屋さん夫婦と
<1> 踊るサンバ 
<2> 引っ越し日
<3> お茶っこ
<4> 土地の売却

第17便~20便 祐子さんの家族
<1> 千手観音
<2> 指定席
<3> 桃の節句
<4> 青いバス

第21便~24便 漁師さん親子と
<1> 草取り 
<2> 大王様
<3> 文学碑
<4> 春の魚

第25便~28便 健太さんの家族
<5> 日本一
<6> 兄と妹
<7> 同級生
<8> 応援歌

第29便~32便 花屋さん一家と
<5> ラブカの歯
<6> ベビーカー
<7> ぴいちゃん
<8> マイホーム

第33便~36便 美智子さん姉妹
<5> 霧の中
<6> ライト
<7> 浜の碑 
<8> シウリ

第37便~40便 床屋さん夫婦と
<5> 土地の記憶 
<6> 路地の潮風
<7> いつも隣に
<8> がんばれた

第41便~第44便 祐子さんの家族
<5> 母と娘
<6> 保健室
<7> 親類以上
<8> バディ

第45便~ 漁師さん親子と
<5> ムは紫式部
 第1話 教科書
 第2話 三つの対策

    Author

    小野智美(おの さとみ)
    朝日新聞社員。1965年名古屋市生まれ。88年、早稲田大学第一文学部を卒業後、朝日新聞社に入社。静岡支局、長野支局、政治部、アエラ編集部などを経て、2005年に新潟総局、07年に佐渡支局。08年から東京本社。2011年9月から2014年8月まで仙台総局。宮城県女川町などを担当。現在、東京本社世論調査室員。


    ​*著書

    小野智美『50とよばれたトキ──飼育員たちとの日々』(羽鳥書店、2012年)
    小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(羽鳥書店、2012年)
    『石巻だより』(合本)通巻1-12号(2016年)

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