昨年の8月から描いてきた作品がようやく完成しました。 夏に行ったカナディアンロッキーで見た、徐々に溶けゆく氷河。 氷に含まれる成分が混ざり合い、見た事のない青さで光り輝く湖。 急斜面にそびえる巨大な岩の塊。 美しくも険しいロッキーの風景を見ながらふと浮かんだのは、 釜の底で今も溶け続ける放射性物質でした。 全く異なる世界に共通する「溶ける」というキーワード。 皮肉にも、震災以来ずっと描きたいと思っていたもやもやしたイメージが ここではっきりと形となって現れました。 湖に面した斜面に立つ巨大な氷塊。
そこには発電所や工場等が取り囲むように建っていて、住宅はその工場の下部や配管などに フジツボのようにくっついている。 人間の生活をより良くするという目的で作り出された発電所はどんどん増え続け、 いつしか住民の生活を隅に追いやり、漠然とした不安との共存を余儀なくさせている。 大量に溜まった汚染水と熱はついにその氷塊自体を溶かし始め、 発電所もろとも美しい湖に向かって滑り始める。 人間は我先にと逃げ出す事しかできず、巨大な廃棄物となったそれは 環境への深刻な汚染だけを置き土産に、やがて水中深く沈んでいく。 タイトルは「Meltdown」。 テーマは深刻ですが、ここ2年でカナダで見た景色や動物なども織り交ぜていて、 ここで暮らした事の集大成のひとつとも言えます。 コメントの受け付けは終了しました。
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Author池田 学(いけだ まなぶ) Archives
8月 2013
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