現代アーティスト・鴻池朋子さんの個展が、秋田ではじまっています。
秋田県立近代美術館 「鴻池朋子 ハンターギャザラー」 2018年9月15日〜11月25日 場所は、奥羽山脈を背後にいだく、秋田県横手市。この東北の背骨の麓で、鴻池さんはまた新たな世界を切り開いています。ここでしか体感できないものを、ぜひ会場であじわってください。 羽鳥書店では、鴻池さんの最新作品集を準備しています。オープン前の会場で、永禮賢さん に写真をとっていただきました。永禮さんは、鴻池さんの第一作品集『インタートラベラー 死者と遊ぶ人』でも写真を撮ってくださった方で、羽鳥書店からは『mind encode』という写真集も出されています。 永禮賢 nagare satoshi オフィシャルサイト 永禮賢『mind encode』 鴻池朋子さんと、永禮さんの写真と、「根源的暴力」以来チームを組んでいるデザイナーの小川順子さんとで、『ハンターギャザラー』はどんな姿にできあがるのか、ぜひお楽しみに! オープン前の撮影の様子をちょっとだけお見せします。会場の様子は、鴻池朋子オフィシャルのSNSをシェアしていきますので、ご覧ください。(リスの剥製は鴻池さんの作品ではありませんが、会場のどこかにいます)。 FB:鴻池朋チェイサー Twitter:鴻池朋子オフィシャル @tomokokonoike Instagram:鴻池朋子オフィシャル *作品集『ハンターギャザラー』は10月下旬に会場先行発売、11月初旬に一般発売の予定です。 前回ご紹介した『論集 蓮實重彦』の編者である工藤庸子さんは、当サイトで「人文学の遠めがね」を連載中です。その第11、12回、13回の3回に分けて「大江健三郎と女性」と題した論考を寄せてくださいました。
11. 大江健三郎と女性(1)──contemporaineであるということ 12. 大江健三郎と女性(2)── 政治少年のéjaculation 13. 大江健三郎と女性(3)──「全小説」とfictionとしての「小説家」」 第11回の冒頭を少し引用します。 フローベールを語らずしてフランス第二帝政を語れるか。プルーストやコレットぬきで第三共和政を描けるか。ウルフを視野に入れずに女性と文学という主題に接近できるのか。だとしたら? そう、大江健三郎を恭しく棚上げにしたまま、日本の戦後を展望できるはずはありません。昭和と平成を束にして生きぬいた作家の「全小説」の刊行が、この7月に始まり、元号の改まった年の秋に完結するとのこと(元号などは無意味な作為だと切って捨てられぬ精神風土や論争が、じっさい日本にはあるのだから、なおのこと)。『読売新聞』はじめ大手日刊紙が著名な作家や評論家のエッセイを掲載し、『群像』8月号には「筒井康隆×蓮實重彦対談」が組まれています。この対談で提示されたキーワード「同時代人」を手掛かりにしたいと思うのですけれど‥‥‥。 とはいえ「あなたは大江健三郎の同時代人ですか?」という問いが、わたしに向けて発されることは、およそ想像すらできません。大江健三郎と対談参加者、これら御三方はほぼ同年齢。それより10歳近く年下ではあるものの、ここで年齢差は理由ではなくて、そもそも「同時代」などという大仰なものについて女性が真剣に考え語ることは、絶対的に期待されない社会の片隅で、昔のわたしは生き始めたという自覚があるためでしょう。 「あなたは大江健三郎のcontemporaineですか?」という問いであれば、話は別、という気がします。わたしにとって外国語の語彙を習得することは、日本社会の厳めしさ、居心地の悪さからの脱出であり、解放の経験でもありました。contemporaineというのはプルースト『失われた時を求めて』からの借用です。(‥‥‥) 「大江健三郎と女性」というテーマで読み解く刺激的な大江論。つづきはぜひ連載ページをお読みください。また、冒頭取り上げられている『群像』8月号に掲載された「筒井康隆×蓮實重彦対談」は歴史的かつ貴重な対談です。こちらもぜひ! 『ユリイカ』2018年9月号(8月27日発売) 特集*濱口竜介――『PASSION』『ハッピーアワー』『寝ても覚めても』…映画監督という営為 この特集号では、濱口監督の前作『ハッピーアワー』について1冊を書き下ろした三浦哲哉さんが、監督の次くらいに(と言いたくなるほど)大活躍されています。目次を見ただけでもお名前を抽出すると、以下のように登場されています。 ■対談 「さいわいなことに、濱口さんも役者が好きなんです」――『寝ても覚めても』をめぐる三つの問題点 / 濱口竜介+蓮實重彥(取材・構成=三浦哲哉) ■『寝ても覚めても』と〈映画〉 串橋がチェーホフの戯曲の一節を暗唱するとき、ひとり驚いていない朝子の目 / 三浦哲哉 ■トークイベント再録 『ハッピーアワー』論の奇妙な冒険 / 濱口竜介+三浦哲哉 ■インタビュー――『ハッピーアワー』を録る 特別な瞬間の響き / 松野泉(聞き手・構成=三浦哲哉) 濱口監督の新作『寝ても覚めても』は9月1日より上映が始まっており、満席が相次いでいるようです。新作をぜひ映画館で楽しんでいただき、前作『ハッピーアワー』をまだご覧になっていない方はぜひBlue-rayで見て堪能し、そして、三浦哲哉さんの渾身の書き下ろし『『ハッピーアワー』論』を読んでみてください。 この号には、蓮實重彥さんが濱口監督をインタビューされています。
「さいわいなことに、濱口さんも役者が好きなんです」――『寝ても覚めても』をめぐる三つの問題点 / 濱口竜介+蓮實重彥(取材・構成=三浦哲哉) また、蓮實さんは、『新潮』2018年10月号(9月7日発売)に『寝ても覚めても』論を寄稿されています。 選ぶことの苛酷さについて――濱口竜介監督『寝ても覚めても』論/蓮實重彥 蓮實さんは、いま日本映画は第三期黄金時代を迎えていると言います。その代表格に、濱口竜介さんほか、三宅唱さん、小森はるかさんなどが挙げられています。三宅唱監督も新作『きみの鳥はうたえる』が公開されたばかり(9/1〜)。この『新潮』にも「貧しさと眩しさ――『きみの鳥はうたえる』について/三宅 唱」を寄稿されています。 濱口監督『寝ても覚めても』と三宅監督『きみの鳥はうたえる』は、『NOBODY』issue47 特集:「映画の絶対的な新しさのために」の2大特集としてとりあげられており、小森はるかさんも寄稿。なおかつ、三浦哲哉さんの『ハッピーアワー論』をめぐるインタビューも掲載された、非常に濃い内容となっています。これからの日本映画をひもとく貴重な一冊! そして、日本映画の第三期黄金時代を支える映画監督や映画評論家が、工藤庸子[編]『論集 蓮實重彦』に集結していることも見逃せません。2016年、蓮實重彦さんの『伯爵夫人』が三島由紀夫賞を受賞した直後に刊行された本書は、蓮實重彦の大いなる影響を受け、ただし、直接の教え子ではない「27名の非嫡出子」による論集です。上記で紹介した方々だけでも、以下のような文章を寄せてくださっています。 映画からこぼれ落ちそうになる男/三浦哲哉 遭遇と動揺/濱口竜介 胸の高鳴りをおさえながら/三宅 唱 眼差しに導かれて/小森はるか 追記(10月5日):『論集 蓮實重彦』では、映画監督の執筆者に、なんとペドロ・コスタ監督も。映画批評・映画研究では、三浦さん以外にも、クリス・フジワラさん、エイドリアン・マーティンさん、リチャード・I・スヘンスキさん、イム・ジェチョルさん、入江哲朗さんと、すごいラインナップです。 『ユリイカ』特集=蓮實重彦(2017年10月臨時増刊号)とあわせて、必読です。もちろん、工藤庸子・蓮實重彦『〈淫靡さ〉について』も併読することをおススメします。 |
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