花屋の千秋さんの長男夫婦には2人の娘がいます。いまは小学3年生と小学1年生。 3年生の子は、魚が大好き。さかなクンのようになるのが将来の夢です。2013年のクリスマスには、叔母の伶奈さんから深海魚の図鑑が贈られ、大喜びでした。 14年1月の夕暮れ時。 海上輸送用のコンテナでつくられた仮設の商店街は、まもなく閉店。私は、長男のおヨメさんの美智子さんと、2人の娘と、ストーブを囲みます。 3年生に尋ねました。好きな魚を教えてください。 「サメの中ではラブカ」 ラブカのどんなところが好きですか。 「ラブカの歯が好き」 まあ、どんな歯をしているんですか。 「こうなっているの」 さらさらと描き上げました。深海にすむサメの仲間だそうです。 おや、クリスマスツリーのようですが、これが1本の歯なのね。 みなさんにもおわかりいただけますよう、左は、私の描いたラブカの口元。そして、右は、3年生が描いてくれた歯1本の拡大図。説明も書き添えてくれました。 もうひとつは、ミツクリザメの絵です。左右とも3年生が描いてくれました。こちらもすごい歯ですが、額も風変わりです。額の拡大図が左。 ミツクリザメは何を食べるのですか。 「キンメダイとか食べるの」。即答です。傍らの美智子さんが「キンメダイも深海魚なんですよ」と補ってくださり、「私も深海魚が好きなんです」。1年生も教えてくれます。「泳ぐのが嫌いな魚がいるの。それで海底を歩いているの」。3年生が続けます。「カエルアンコウ。尾びれが変化して歩くの」。海の中には不思議な世界が広がっていますねえ。 そのひとときは、美智子さんにお願いして設けていただいた時間でした。 3年生と1年生の笑顔に、私は、ほっと心温まり、家路に着きました。 このブログの第7便にも書きましたが、いまも3年生の心の中には、震災の記憶があります。その記憶が鮮明によみがえった12年12月の津波警報の後、私がお店へやってきて、母や祖母と津波の話を始めたのです。3年生の凍りついた表情に私が気づいたのは、話し終えた後のことでした。それ以来、学校で、お店で、私が声をかけると、3年生のお顔から、すっと笑みが消えるようになりました。もう一度、一緒に笑顔になれる話をしたい、と願っていました。 女川町で被災した男性から、こう聞かされたことがあります。「今が一番つらい」。大人でさえ、長年の経験をもってしても、つらくてたまらないのに、子どもでしたら、なおさらでしょう。大事な教えを、3年生から授かりました。 コメントの受け付けは終了しました。
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Author小野智美(おの さとみ) Archives
3月 2019
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