2013年7月14日。私は休暇をとり、仙台市民球場のスタンドにいました。夏の高校野球県大会です。健太さんの母校、県立古川高校が初戦に挑んでいました。 私はタオルを振り回し、声を張り上げます。 隣に、健太さんの彼女と、お父さんも座っています。 タオルは、11年11月、健太さんをしのぶ会の参列者たちへ渡すため、彼女がデザインして作ったものです。みんながスポーツ観戦に行く時、どうぞ、一緒に連れて行ってもらえますように。そんな思いがこもったタオル。端に記した数字の「2」は背番号です。 両親が署名活動を始めたのは、2012年12月1日でした。 仙台の街頭に立ちます。 お父さんは、用意した横断幕の前でハンドマイクを手に、署名を呼びかけました。 この日の最高気温は4.7度。北北西の風が吹き付け、氷点下のような寒さを感じます。 マイクを握るお父さんの手は真っ赤です。 手袋をしたらいかがですか、と私が話しかけると、お父さんは「いや、健太に笑われてしまう」。2時間、お父さんは素手を通しました。 両親にとって初めての署名活動。 お母さんは声が出ません。 誰にどう切り出したらよいかもわかりません。 手作りの看板を背負って、立ち尽くしていました。 |
Author小野智美(おの さとみ) Archives
3月 2019
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