さて約9時間のフライトを終えようやくバンクーバー国際空港に降り立った僕ら。 最初に待っていたのは入国審査でした。 僕は東南アジアには何度か行ったことがあり、4か月近く一人で旅行したこともある。 最初はものすごく緊張したけど、空港に着いた途端腹が据わり、いい意味で開き直って英語を話し、 「ああ俺って意外と度胸あるじゃん!」なんて思ったりしたのですが、 しかしここではすっかりビビってしまってる! アジアでは、下手な英語同士、通じなくても笑顔で結果オーライ! て感じがあったんだけど、 ここは本場。 スキーでいえば超上級者の急斜面コースにボーゲンの僕が放り出されたようなもの。 それですっかりおじけづいちゃったんです。 しかもこっちの人ってアジア人と違ってなんか親しみがわかないし。 自分と同じくらいの人の中では奔放に振る舞うけど、 うまい人達の中に入ったら急に弱腰になる俺って……小者……。 「いいじゃん下手なんだからどーんとぶつかれば。分かってくれるよ!」 僕とは真逆に、物怖じしない妻を見ながら、そんな自分の新たな一面を発見したのでした。 さて入国審査。
僕のような、旅行者とは違う人達は別室に通されていろいろと書類や質問などされるわけですが、 これが待っても待っても進まない。 だだっ広い部屋に長ーいカウンターがあって、15個くらいの窓口があるんだけど、窓口にいるのは2人だけ。 それも途中でいなくなったり、席に着いたかと思うとコーヒーを飲んでたり。 何のための窓口の数? はじめは休み時間かなと思っていたんだけど、そういうわけでもなさそう。 これもカナダか。 そこに20人くらいが並ばされて順番に呼ばれるのを待っているんだけど、 そんな感じだから一人が終わるのに20分くらいかかる。 緊張してる僕は、待ってる間に何度も書類のチェックをし、聞かれる質問を想定して頭の中で英文を作り、 時々前の人たちの質疑応答に耳をすましていたんだけど…… でもなんだかみんな苦戦してる(ように見える)。 2時間後、ようやく呼ばれて証言台の前へ。 まさにそんな心境です。 検察官(女性です)はニコリともせず僕の書類に目を通し、早口の英語で矢継ぎ早に質問。 もうこうなると、蛇に睨まれたカエルですな。 緊張で体中から嫌な汗がにじみ出し、何を言ってるのかも、どう質問していいのかも、 とにかく何~にもわからない! 僕の目は検察官の猛禽類のような目に釘づけになり、まるで呪文によって動かされるように ついつい首がうなずいてしまう! 「フフン、フフン」と! 「イエス、イエス」と! これじゃあ典型的なイエスマンじゃないか。 頭は真っ白、言葉が騒音のようにただ右から左に通過し、ところどころの「Do you understand?」に うなずきながらさすがに「もうわかりません!」と大声で言おうかと思い始めたころ、 「OK. Bye.」 釈放されました。 はあ~ どっと疲れた。 これぞ本場の洗礼……。 その晩ホテルに着いたものの、打ちのめされたショックと疲労感で何もやる気が起きず、 一つベッドの上で家族3人小さくなって日本から持ってきたおむすびを食べたのでした。 すっぱい味だったなあ。 コメントの受け付けは終了しました。
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Author池田 学(いけだ まなぶ) Archives
8月 2013
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