ウィスコンシン州のマディソンという街にあるChazen Museum (チャゼン美術館)から
アーティスト・イン・レジデンスのオファーがあったのは初夏も終わり、 先の見えない状況に疲れ始めていた頃でした。 アーティストインレジデンスとはアーティストをその施設なり街に一定期間招聘し、滞在して作品を制作、 その様子を公開したり展覧会を行う等の文化交流を通して地域の活性化をはかる事業の一つで、 期間もレジデンスによって数週間から数年までとさまざま、施設も世界各都市にあって、 世界中からいろいろなアーティストがこの制度を利用して作品制作を行っています。 今回の僕の件は、チャゼンミュージアムの館長さんが去年のニューヨークでの展示を見て 興味を持ってくださり、声をかけてくださったのでした。 僕にとっては全く想像もしていなかった話なのでありがたい反面、不安もあったのですがこれも縁です。 チャンスは常に予想もつかないところからやってくるとも言いますし。 制作場所も美術館の一室を提供してもらえるのでスペース的にも全く問題ない上、 滞在期間も今回の大作が完成するまでいてよい! ということ。 他にもいろいろと好条件で、考えれば考えるほど断る理由が見つかりません。 そこでまずは下見と挨拶もかねて一度現地に行ってみようということになったのでした。 運転に疲れた僕にかわって国境までは妻が運転することに。
思えばそこが分岐点でした。 車内では旅の思い出話で盛り上がり、直前まで不安すら感じないまま国境ゲートへ。 アメリカからカナダへ入るには、高速道路の料金所のような感じのゲートに一台ずつが入り、 パスポートの提示とカナダ滞在の理由や滞在日程など、簡単な質問を受けます。 ほとんどの車は何の問題もなく通過していくうえ、去年のシアトル旅行でもあっけないほど簡単だっただけに まったくもって油断していました。 質問に答えるのは今回はドライバーである妻。 ここで問題となってくるのは観光で滞在しているということ。 それについては何ら違法ではないのですが、滞在期間が長いので、もし聞かれたらその理由を うまく説明せねばなりません。 さらには帰国時期も決まっておらず、あと半年間の滞在延長を申請しようとも思っています。 去年は文化庁からの派遣というお墨付きがありましたが、今年は何もない上に一度ワークビザの申請を 断られているという引け目もあり、必要以上にドキドキします。 最悪の場合、カナダに入れずそのまま日本へ送還…… という怖い話も聞いていたので、妻と車内で何と答えるか軽い打ち合わせをしました。 ここでは車の運転にも細心の注意が必要みたいです。
できれば不慣れなこの土地での運転は避けたいところですが、かといってこの坂じゃ 自転車や徒歩もかなり辛い。そこで強い見方になってくれるのが路面電車。 主要な通りを結ぶこの情緒漂う乗り物は、利便性のみならず観光的にも大きな役割を担っていて、 それがサンフランシスコをアメリカでも個性を持った街のひとつに仕立て上げているようです。 街並みは小綺麗で良く整備され、通りを歩く人々も実に多様。 バンクーバーは移民の都市ですが大きく分けるとカナダ人と中国人が占めるのに対し、ここは完全に多国籍。 ヒスパニック系もいればインド系やアフリカ系などの人も多く、都市から感じられる熱気と活気が全く違います。 またそれだけにファッションも多彩で華やか。 バンクーバーの地味な色合いにいつのまにか慣れてしまっていた目には鮮やかすぎて痛いくらいでした。 チャイナタウンはじめ各国の料理も豊富に揃い、食材も地元カリフォルニア産の新鮮で美味しいものばかり。 ユニクロや無印良品など、日本系の店も多くあります。 とにかくいろいろな意味でバンクーバーをひと周りもふた周りも大きく、明るくした印象。 |
Author池田 学(いけだ まなぶ) Archives
8月 2013
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