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​​バンクーバー日記は2013年8月に62便にて終了いたしました。ご愛読いただきありがとうございました。
アメリカ・ウィスコンシンへと場所を移し、「マディソン日記」を連載中です。

第57便 救急病院

3/23/2013

 
そうなんです。
ついに病院にかかってしまいました。しかも救急の。
いわゆるエマージェンシーホスピタルというやつで、緊急を要する患者さんが運ばれてくるところです。
 
あれは先週の木曜日、いつものように午前中娘をプレスクールに連れて行き、彼女が遊んでる間、
隣の部屋で待っていたんですが、突然目の前にギザギザした残像のようなものが現れました。
何か眩しいものでも見たっけ?と思い、たいして気にしてなかったものの、だんだんそれは大きくなっていき、
ついには像がうまく見えなくなり……
何かを見ようとして焦点を合わせようとしても、そこだけがぽっかり消えてしまうのです。
これには本当に驚き、まさか失明かと真剣に焦りました。
これまでこんな経験はないですし、目を酷使してきたツケが回ってきたのかと思うと気が気でなかったのです。
そのうち10分ほどすると今度は頭痛が。
吐き気もしてきてそこからは動けなくなり、妻に電話して迎えにきてもらいました。
僕の様子を見た妻もただ事ではないと思ったらしく、保険屋さんに電話して病院や通訳さんの手配をしてくれ、
近くの救急病院へと向かったのです。
 
病院に着くとすぐにベッドに寝かされ、問診や書類の記入。
突然だった為に通訳さんもまだ到着しておらず、頭痛を抱えながらの英会話は地獄でした。
まもなく通訳さんが見え、CTスキャンを撮ることに。
それから血液検査を行い、吐き気を抑える薬を点滴で投与します。
僕の静脈は細く、大概の看護婦さんが失敗することをこれまでの経験で知っていたので、
失敗しないように気をつけてねと言おうにもそれすらどうでもよく、案の定失敗されて痛い目に遭いました。
そういう事もあり、日頃から病院が嫌いで出来るだけ我慢してしまう僕ですが、この時だけは
早くどうにかして欲しいという一心で、その気持ちの変化に自分でも驚きました。
 
CTも終わり、薬も効いて症状も随分良くなったのが、運ばれて2時間ほど経った頃。
こうなると普段の恐怖心が徐々に蘇り、周りの患者さんの痙攣する声やずらりと並んだ医療機器などが
怖くて仕方ありません。
またこちらではとにかくいちいち時間がかかります。
ほとんど言葉の分からない場所に病気で収監されている自分を思うと、不安で一刻も早く帰りたい気持ちに
襲われ、とにかく冷静を保っていなければと自分に言い聞かせていました。
また、あのどこも痛くなかった昨日までの日々がかけがえのないものに思えてならず、
何でもない事の奇跡を感じずにはいられませんでした。
 
夕方近くになってようやく先生が入ってきて告げられた結果。
CTも血液検査も異常なし。
症状を聞くに典型的な偏頭痛だとの診断でした。
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​ひとまずはホッとしましたがまさか偏頭痛とは。
これまでほとんど頭痛を経験した事がないのでイメージができませんでしたが、
こんなに辛いものだとは思ってもいませんでした。
そしてなによりもあの不気味な視覚障害の恐怖。
いつまた襲ってくるかと思うと、心までも萎えてしまいます。
原因は人それぞれだけどストレスも大きく関係しているとの事。
こんなに楽しい毎日のどこに?と思っていましたが、よくよく考えてみるとこの2年間、
慣れない環境の中で自然と張りつめていたものが蓄積されていたのかもしれません。
 
そうなると急に心が弱気になり、しばらく日本に帰ってホッとしたいという気持ちが頭をもたげてきました。

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    Author

    池田 学(いけだ まなぶ)
    画家。1973年佐賀県多久市生まれ。98年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。2000年同大学院修士課程を修了。 2011年1月25日より1年間、文化庁の芸術家海外研修制度でカナダのバンクーバーに滞在。バンクーバーへは、奥さんと2歳の長女も同行。2012年3月に再渡航。2013年夏にはアメリカ・ウィスコンシン州マディソンに場所を移し、美術館で滞在制作を開始。

    『池田学画集1』 
    ミヅマアートギャラリーの作家紹介

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