3月11日の地震以来、ニュースでもインターネットでも繰り返し流され続けるショッキングな映像、 そして日に日に明らかになっていく絶望的な被害の内容。 パソコンの前に釘付けになり、とめどなく溢れてくる情報にかじりついては不安を募らせ、 ただただ大変な事が起きてしまったという現実に、何もやる気が起きない日が続きました。 こんな時にアートなんてただの娯楽。 そんな娯楽よりも今は日本の為になるような何かを探すべきなんじゃないか……とか。 自分だけ国を出たことに申し訳なさを感じたり……とか。 雨の中、部屋に閉じこもって災害情報を聞いてても気が滅入るだけだからと外に出るが、 歩く人々は皆外国人。彼らはいつもの様に日常を送っている。 情報の渦の中に入り込み、気持ちが日本に飛んでしまっている僕には、ドアを開けたその先の世界がカナダであり、 目の前の風景には地震の面影などつゆほどもなく、ついさっきまで聞いていたあの惨劇はここでは遠い外国の話題 というギャップにかなり混乱し、はがゆさと同時にどうしようもない疎外感を覚えました。 そんな気持ちなのであと5日後に始まる展覧会のオープニング(*1)に合わせてニューヨークに行く事が とても不謹慎なように思われ、正直行くのをやめようかと真剣に考えたりもしました。 こんな時に展覧会なんて、人が来るのか? パーティーだなんて、その瞬間にも被災地の人は大変なんだぞ。 そもそも今ニューヨークで日本のアートを紹介してなんの意味がある? ……などなど思ったことは数知れず。 しかしそんな時でもギャラリー(*2)のオーナーはニューヨークまで来るということだったので、 僕らも重い気持ちを引きずって空港へ向かったのでした。 家を出る時は管理人のおじさんに、途中で寄った郵便局では受付のお姉さんに、 空港では手荷物検査のスタッフまでもが、日本は大丈夫か、家族はどうだ? と心配してくれ、その気持ちのあたたかさに張り詰めていた心が少しほぐされたような気がしました。 夜11時に出発した飛行機は4時間半後にはニューヨークのJFK空港に。 時差は3時間進み、こちらの時間は朝7時。 空港は早朝の光が差し込み、沢山の旅行者が行き交い、 カナダではあまり見かけないアフリカ系の人達も沢山いて、 否が応でもアメリカ!を感じずにはいられない。 その活気、そして何より太陽の光! 僕らの沈んでいた心はまるで濡れた地面が乾いていくように軽くなり、代わりに ニューヨークへ来たんだ!という興奮が沸き起こってきたのでした。 やはり太陽という存在は何にも勝るものなのかなあ。 千の励ましの言葉より、ひとすじの太陽の光。 そういうものなのかもしれません。 *1 「バイバイキティ! 天国と地獄の狭間で――日本現代アートの今」展 2011年3月18日(金)~6月12日(日) ジャパン・ソサエティ(NY) *2 ミヅマアートギャラリー コメントの受け付けは終了しました。
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Author池田 学(いけだ まなぶ) Archives
8月 2013
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