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​​東日本大震災(2011年3月11日)の震源地に最も近かった宮城県の牡鹿(おしか)半島。その付け根に位置する女川町を中心に、半島一帯を取材してまわる記者の出会いの日々を綴ります。老親の帰りを待つ人がいます。幼子の帰りを待つ人がいます。ここに暮らす人々の思いに少しでも近づけますように。──小野智美

第1便 健太さんの家族<1> 2度目の秋

10/17/2012

 

​ みなさま、こんにちは。宮城県の牡鹿半島からお便りしています。ここ牡鹿半島も10月、長い長い酷暑からようやく解放されました。やわらかい秋の日差しにほっと息をついていましたら、健太さんのお父さんから、こんなお便りをいただきました。
 
 「日暮れが早くなり、涼しくなってくると、いやな気持ちになりますね」
 思い出すのです。春まだ浅く日暮れも早かった2011年3月11日を。
 
 長男の健太さんは25歳でした。東京の大学を卒業後、生まれ育った宮城県に戻り、全国屈指の地方銀行、七十七銀行に就職しました。
 
 最初は仙台市の支店で働き、2010年春、女川町の女川支店へ転勤しました。あの日も、女川港そばの支店にいました。12人の行員と共に2階建ての支店の屋上へ避難しましたが、津波が到達します。次の週末には恋人を両親に紹介する予定でした。
 
 牡鹿半島で取材を始めて1年が過ぎ、2度目の秋を迎えました。自戒を繰り返す毎日です。忘れている時があるのです。めぐる季節に、心浮き立つ人もいれば、心が沈む人もいることを。
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写真は、この秋に撮影した牡鹿半島へ向かう私の通勤路、東松島市の大曲浜(おおまがりはま)の景色です。地平線に並ぶ家々をご覧いただけますでしょうか。遠目には閑静な住宅街に見えるのですが、いずれも津波で被災し、今は空き家になっています。
 
 この光景を初めて見た1年前、まさに胸がぎゅっと締め付けられるような痛みを覚えました。よそから来た私でさえ、これほど痛く感じるのですから、この地に暮らす人々はどれほど切ないでしょう。ここにいたい。一緒にいたい――あの時、心の底から、その思いだけがわきあがってきました。

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    Author

    小野智美(おの さとみ)
    朝日新聞社員。1965年名古屋市生まれ。88年、早稲田大学第一文学部を卒業後、朝日新聞社に入社。静岡支局、長野支局、政治部、アエラ編集部などを経て、2005年に新潟総局、07年に佐渡支局。08年から東京本社。2011年9月から2014年8月まで仙台総局。宮城県女川町などを担当。現在、東京本社世論調査室員。


    ​*著書

    小野智美『50とよばれたトキ──飼育員たちとの日々』(羽鳥書店、2012年)
    小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(羽鳥書店、2012年)
    『石巻だより』(合本)通巻1-12号(2016年)

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