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​​東日本大震災(2011年3月11日)の震源地に最も近かった宮城県の牡鹿(おしか)半島。その付け根に位置する女川町を中心に、半島一帯を取材してまわる記者の出会いの日々を綴ります。老親の帰りを待つ人がいます。幼子の帰りを待つ人がいます。ここに暮らす人々の思いに少しでも近づけますように。──小野智美

第44便 祐子さんの家族<8> バディ

4/11/2016

 

 めざめる前の私の夢に、祐子さんのご主人がよく登場します。
 2015年春はこんな活躍を見せてくれました。
 バルタン星人を抱きしめ、シュワッチと飛び立つ。
 地上で手をふる私は、ウルトラセブンを見送っているつもりです。
 この夢をお話ししましたら、ご主人いわく「58歳のウルトラセブンにバルタン星人はちょっと厳しいですね」。
 そのウルトラセブンはオレンジ色のキャップをかぶっていました。
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第43便 祐子さんの家族<7> 親類以上

3/10/2016

 

​ 季節がめぐり、5年を迎えます。
 今朝の東京は曇天。明日の天気が、気がかりです。あの時も灰色の雲が空を覆いました。
 明日は晴れてほしい。あの時とは似つかぬ、雲ひとつない青空であれば、と願います。
 
 でも、明日がどんな空模様であれ、ご主人は大丈夫。そんな予感もあります。
 
 2015年度は皆様にはどのような年でしたでしょう。私は仕事に追われました。一度、午前3時までの残業を嘆きましたら、ご主人からこんなメールが届きました。
 
 3時と言うと、俺が起きる1時間前まで仕事中ですね!(°_°)
 
 愉快な絵文字に仕事の疲れがすべて吹き飛びます。
 ご主人は航空自衛隊を定年退職し、女川町でバス運転手として再就職しました。今は女川原子力発電所で働く人たちの通勤バスを担当し、毎朝4時すぎに起床します。
 
 ご主人からのメールに初めて絵文字が加わったのは、12年夏のこの時です。
 
 やっとスタートラインに着いた感じです。今、一人で一杯やっているところです。いつか皆で一杯と思っています。
 
 「一杯」それぞれにビールジョッキの絵文字がついています。

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第42便 祐子さんの家族<6> 保健室

2/11/2016

 
 
 2015年12月の夕方、仙台駅前を急ぎます。
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​ 白い息を吐く私の額からは玉のような汗。待ち合わせ場所に着くと、開口一番に「更年期でね、汗かいちゃうの」と説明します。待ち合わせた相手は「大変ですよねえ」とうなずいてくれました。ありがとう。同い年の友のようだわ。いえいえ、相手は28歳下の大学4年生。祐子さんの長女です。
 
 あの日は、石巻高校の2年生。授業中でした。
 長女が大学2年生の時に記した文章から当時をたどります。

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第41便 祐子さんの家族<5> 母と娘

1/11/2016

 

 小春日和の昼下がり。
 訪ねてきた私を見るなり、祐子さんのお母さんは明るい声を上げました。
 「あらぁ、裸みだいな格好して」
 え、裸? この言葉を初めて耳にした時はあわてました。
 女川や石巻でよく使われる、薄着をたしなめる表現です。
 「私は、ほらぁ」
 ご自分の首元に手をあてます。
 重ね着した襟を一つずつ引き出しながら「さまざまなものを着ているのよ」。
 語り口はユーモアたっぷり。
 お母さんは難病を患うため伏せがちですが、小康を保つ日は笑顔で迎えてくださいます。
 
 男兄弟の中で育ちました。
 同じく女川町で生まれ育ったお父さんと1962年に結婚。
 サケマス漁に携わるお父さんは、米国アラスカ沖まで出漁し、3カ月は留守にします。
 お父さんの留守中も、お母さんは町内の水産加工場で働きます。
 その間、おばあさんが孫娘の面倒を見ます。お母さんの母親です。一緒に暮らしていました。息子より娘が一番と、おばあさんはお母さんを手放しませんでした。

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第20便 祐子さんの家族<4> 青いバス

7/18/2013

 

 女川町へ通じる国道398号は、海沿いにカーブがつづく片側1車線の道路です。ダンプカーが車線をはみだして向かってくることもあり、注意しなくてはなりません。対向車線に青いバスを見つけることがあります。町民バスです。目を凝らすと、29人乗りの小さなバスの運転席には祐子さんのご主人。手をふる私に気づき、すっと右手をあげてくださいます。よし、私もがんばるぞ、と力がわいてきます。
 
 バス運転手として再就職が決まったことを誰よりも喜んでくれたのは、祐子さんでした。ご主人は思っています。バスに乗せてあげたかった……。
 「だから、毎日、一緒なんです」
 運転免許証には祐子さんのお写真をはさんでいます。
 
 町民バスは、町のすべての仮設住宅をめぐり、仮設商店街や病院と結びます。昨年度は20311人が乗車しました。無料です。誰でも乗れます。今年5月初め。私もご主人が運転するバスに乗りました。車窓の景色をご覧ください。

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第19便 祐子さんの家族<3> 桃の節句

7/1/2013

 

 昨年10月11日。七十七銀行女川支店の跡地前で車を止めました。花壇の黄色い菊が目をひきます。ぽっと光をともしたような光景でした。おばあさんが手向けたお庭の菊でした。
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第18便 祐子さんの家族<2> 指定席

6/17/2013

 

 女川港から国道を東へ約3キロ走ると、女川湾を望む高台に着きます。崎山(さきやま)公園と呼ばれ、滑り台やシーソー、ジャングルジムがありました。遊具だけ見れば、どこでも目にするような公園です。
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第17便 祐子さんの家族<1> 千手観音

5/29/2013

 

 震災から間もなく2年を迎える日曜日。私は女川町の塚浜(つかはま)へ出かけました。女川港から海岸伝いに南東約15キロ先にある浜です。浜から1キロほど先には東北電力の女川原子力発電所があります。その日、祐子さんのご主人も一緒でした。
 
 浜辺を一緒に歩きました。冬枯れの草むらに洗面器やバケツが散らばっています。扇風機の羽根がありました。洗濯機のふたもありました。ストーブの灯油タンクもありました。「しらすふりかけ」の文字が残る錆びた空き缶も──。2年前、そこには扇風機が回っていた夜があり、洗濯機が音を立てていた朝があり、ストーブで暖まった人がいたことを思います。
 
 奥の山ぎわまで歩きました。大木が立っていました。立派な枝を千手観音のように広げています。女川町が天然記念物に指定したタブノキです。樹齢300年以上になります。これから町は山を切り開き、今回の規模の津波があっても浸水しない高台に宅地を造成します。タブノキが造成後もそこに残るかどうか、まだわかりません。
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    Author

    小野智美(おの さとみ)
    朝日新聞社員。1965年名古屋市生まれ。88年、早稲田大学第一文学部を卒業後、朝日新聞社に入社。静岡支局、長野支局、政治部、アエラ編集部などを経て、2005年に新潟総局、07年に佐渡支局。08年から東京本社。2011年9月から2014年8月まで仙台総局。宮城県女川町などを担当。現在、東京本社世論調査室員。


    ​*著書

    小野智美『50とよばれたトキ──飼育員たちとの日々』(羽鳥書店、2012年)
    小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(羽鳥書店、2012年)
    『石巻だより』(合本)通巻1-12号(2016年)

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