小春日和の昼下がり。 訪ねてきた私を見るなり、祐子さんのお母さんは明るい声を上げました。 「あらぁ、裸みだいな格好して」 え、裸? この言葉を初めて耳にした時はあわてました。 女川や石巻でよく使われる、薄着をたしなめる表現です。 「私は、ほらぁ」 ご自分の首元に手をあてます。 重ね着した襟を一つずつ引き出しながら「さまざまなものを着ているのよ」。 語り口はユーモアたっぷり。 お母さんは難病を患うため伏せがちですが、小康を保つ日は笑顔で迎えてくださいます。 男兄弟の中で育ちました。 同じく女川町で生まれ育ったお父さんと1962年に結婚。 サケマス漁に携わるお父さんは、米国アラスカ沖まで出漁し、3カ月は留守にします。 お父さんの留守中も、お母さんは町内の水産加工場で働きます。 その間、おばあさんが孫娘の面倒を見ます。お母さんの母親です。一緒に暮らしていました。息子より娘が一番と、おばあさんはお母さんを手放しませんでした。 |
Author小野智美(おの さとみ) Archives
3月 2019
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