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​​東日本大震災(2011年3月11日)の震源地に最も近かった宮城県の牡鹿(おしか)半島。その付け根に位置する女川町を中心に、半島一帯を取材してまわる記者の出会いの日々を綴ります。老親の帰りを待つ人がいます。幼子の帰りを待つ人がいます。ここに暮らす人々の思いに少しでも近づけますように。──小野智美

第7便 花屋さん一家と<3> 父の双眼鏡

12/24/2012

 

 女川町のコンテナ村商店街。その入り口から見た千秋さんのお店がこちらの写真です。
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​ コンテナの店舗を囲むウッドデッキは、ボランティアのみなさんが作ってくれました。
 
 今年秋、千秋さんはこんな話をしてくれました。
 
 お父さんの船が昨年5月に見つかりました。船にのこっていたお父さんの双眼鏡を、千秋さんが引き取りました。最近までそれを手に取る気持ちにはなれませんでしたが、このごろ、ようやく手にできるようになりました。
 
 目元にあてて、のぞいてみます。レンズが壊れて何も見えません。でも、「見える、見える」と明るい声で言ってみます。

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第6便 花屋さん一家と<2> ゼラニウム

12/17/2012

 

  こちらの写真は、私の部屋にあるゼラニウムの鉢植えです。これは、育ての親、花屋の千秋さんにはちょっとお見せできない写真です。 
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 昨年暮れ、千秋さんのお店で買った時は、とても青々とした葉でした。ところが、この夏、日焼けしたのか、しみだらけの葉に変身してしまったのです。もうひとつ買っておいた観葉植物は夏の間に枯れてしまったので、このゼラニウムを枯らすことはできません。
 
 この赤い花を見るたび、買い物した時の千秋さんの笑顔を思い出し、うれしくなります。

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第5便 花屋さん一家と<1> 花届ける日

12/11/2012

 

  牡鹿半島を海沿いに車で行くと、いくつもの入り江を通ります。あの日、半島一帯は1メートルほど地盤沈下しました。岸壁も沈み、波が打ち寄せています。陸側には更地が広がっています。その所々に置かれた花瓶が、その地に人々が暮らしていたことを静かに語り継いでいます。花瓶に菊や百合が供えられた日は、その日が月命日の11日であることを思い起こします。1カ所だけ真新しい花束を目にすることもあります。今日はお誕生日かしらと思いめぐらせます。
 
 今年9月26日。私も花を届けました。これまでお話ししてきました、銀行員の健太さんが、海から帰ってきた日です。銀行支店の建物は、この春、撤去され、今は更地になっています。健太さんの両親は、ほかの家族の方々と、そこに花壇を作りました。姉が好きだった赤色の花、妻が好きなピンク色の花の鉢植えを、それぞれ置きました。小さな太陽光のライトも備え付けました。待っているよ、と。健太さんを含む行員4人は遺体で見つかりましたが、8人がまだ帰ってきてません。

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第4便 健太さんの家族<4> 高校球児へ

12/4/2012

 

​ 25歳の銀行員健太さんは、2人きょうだいの兄でした。4歳下の妹がいます。身長は171センチ。肩幅がありました。背格好も、お顔も、お父さんそっくり。
 「息子はお父さんの分身なんです」とお母さんが笑います。
 お父さんによると、健太さんの性格はお母さんそのものだそうです。良いものは良い、悪いものは悪い、とはっきり言う子でした。
 
 健太さんは、お父さんの母校でもある宮城県立古川高校へ入学し、野球部に入りました。正捕手を務め、高校3年の夏の県大会ではベスト8入りを果たします。高校3年間の公式戦でパスボールが一つもなかった捕手でした。
 
 昨年夏はまだ一心不乱に捜していました。今年夏、お父さんは初めて、息子の高校時代の野球帽を手にとりました。帽子の内側に手書きの字が残っていました。
 ONE FOR ALL
 その言葉を記した横断幕を作り、この夏、母校の野球部へ贈ることにしました。

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    Author

    小野智美(おの さとみ)
    朝日新聞社員。1965年名古屋市生まれ。88年、早稲田大学第一文学部を卒業後、朝日新聞社に入社。静岡支局、長野支局、政治部、アエラ編集部などを経て、2005年に新潟総局、07年に佐渡支局。08年から東京本社。2011年9月から2014年8月まで仙台総局。宮城県女川町などを担当。現在、東京本社世論調査室員。


    ​*著書

    小野智美『50とよばれたトキ──飼育員たちとの日々』(羽鳥書店、2012年)
    小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(羽鳥書店、2012年)
    『石巻だより』(合本)通巻1-12号(2016年)

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