震災から間もなく2年を迎える日曜日。私は女川町の塚浜(つかはま)へ出かけました。女川港から海岸伝いに南東約15キロ先にある浜です。浜から1キロほど先には東北電力の女川原子力発電所があります。その日、祐子さんのご主人も一緒でした。 浜辺を一緒に歩きました。冬枯れの草むらに洗面器やバケツが散らばっています。扇風機の羽根がありました。洗濯機のふたもありました。ストーブの灯油タンクもありました。「しらすふりかけ」の文字が残る錆びた空き缶も──。2年前、そこには扇風機が回っていた夜があり、洗濯機が音を立てていた朝があり、ストーブで暖まった人がいたことを思います。 奥の山ぎわまで歩きました。大木が立っていました。立派な枝を千手観音のように広げています。女川町が天然記念物に指定したタブノキです。樹齢300年以上になります。これから町は山を切り開き、今回の規模の津波があっても浸水しない高台に宅地を造成します。タブノキが造成後もそこに残るかどうか、まだわかりません。 昨年暮れのことです。女川町役場の取材を終え、女川港へ急いでいると、車から妙な音がします。路肩に止めて点検すると、後輪のパンクでした。 さて、どうしたものか。2キロほど先のバイク店へ向かいました。店主は一目で「ここにクギが」。慣れた手つきでタイヤからクギを抜き取り、10分もたたずに修理は完了。 そのクギがこちら。大きさを見ていただくのに、本と一緒に置いてみました。 |
Author小野智美(おの さとみ) Archives
3月 2019
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