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​​東日本大震災(2011年3月11日)の震源地に最も近かった宮城県の牡鹿(おしか)半島。その付け根に位置する女川町を中心に、半島一帯を取材してまわる記者の出会いの日々を綴ります。老親の帰りを待つ人がいます。幼子の帰りを待つ人がいます。ここに暮らす人々の思いに少しでも近づけますように。──小野智美

第37便 床屋さん夫婦と<5> 土地の記憶

8/11/2015

 

 「ブブブ……」。パソコンの傍らで携帯がふるえ、メール到着を告げます。
 天気情報です。件名は「降りはじメール」。
 本文は「石巻市 降水予測14:50頃から」。宮城県石巻市の天候が変わるたびに届くメールです。
 窓へ目を向ければ、オフィスの外には雲ひとつない青空。眼下には日本最大の魚市場、築地市場を映しながら、まぶたの奥に浮かぶのは、雨に煙る浜、大きな黒い土嚢を積んだ岸壁、ひときわ濃くなる潮のにおい――。
 私は2014年9月、牡鹿半島駐在に終止符を打ち、東京都中央区の築地市場前にある東京本社へ戻りました。
 
 転勤を機に、このブログは第48便で結ぶことを考えながら、本社での新しい仕事と、仕事の合間に作る「石巻だより」で手一杯になり、今日に至りました。これから、時計の針を巻き戻しながら、お話ししたいと思います。

さらに詳しく

    Author

    小野智美(おの さとみ)
    朝日新聞社員。1965年名古屋市生まれ。88年、早稲田大学第一文学部を卒業後、朝日新聞社に入社。静岡支局、長野支局、政治部、アエラ編集部などを経て、2005年に新潟総局、07年に佐渡支局。08年から東京本社。2011年9月から2014年8月まで仙台総局。宮城県女川町などを担当。現在、東京本社世論調査室員。


    ​*著書

    小野智美『50とよばれたトキ──飼育員たちとの日々』(羽鳥書店、2012年)
    小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(羽鳥書店、2012年)
    『石巻だより』(合本)通巻1-12号(2016年)

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