羽鳥書店 Web連載&記事
  • HOME
    • ハトリショテンだより >
      • 近刊新刊 案内
      • 図書目録
    • 人文学の遠めがね
    • 憲法学の虫眼鏡
    • 女川だより
    • 石巻だより
    • バンクーバー日記
  • 李公麟「五馬図」
  • ABOUT
  • OFFICIAL SITE
  • HOME
    • ハトリショテンだより >
      • 近刊新刊 案内
      • 図書目録
    • 人文学の遠めがね
    • 憲法学の虫眼鏡
    • 女川だより
    • 石巻だより
    • バンクーバー日記
  • 李公麟「五馬図」
  • ABOUT
  • OFFICIAL SITE
画像
​​東日本大震災(2011年3月11日)の震源地に最も近かった宮城県の牡鹿(おしか)半島。その付け根に位置する女川町を中心に、半島一帯を取材してまわる記者の出会いの日々を綴ります。老親の帰りを待つ人がいます。幼子の帰りを待つ人がいます。ここに暮らす人々の思いに少しでも近づけますように。──小野智美

第13便 床屋さん夫婦と<1> 踊るサンバ

3/23/2013

 

​ 遠目ではわからないことがあります。女川町から道なりに約20キロ北へ。昨年秋、私は北上川の河口に向かいました。川沿いの細い砂利道を走ります。前方に大型トラックを見つけるたび、道端に車を寄せて待ちます。1キロ進むにも5分かかるような道でした。
 そこは震災後に急いで造られました。牡鹿半島を中心に、石巻市の沿岸部は、震災で1メートルほど地盤沈下しました。川沿いにあった舗装道路も沈み、津波は周囲の住宅や商店を押し流し、一帯は湿地に姿を変えました。
 そろそろ河口に着いたのか、と砂利道から目を凝らします。水面に浮かんで見えるのはガードレールでした。
画像
画像

​ 目に映していても、気づかないことがあります。こちらも北上川の河口に近い長面浦(ながつらうら)のそばを通った昨秋のこと。丸い葉は「ホテイアオイ」に似ています。青い花を写真におさめて通り過ぎました。
画像
画像

​ あとから新聞記事で知りました。それは「ミズアオイ」でした。準絶滅危惧種です。絶滅危惧種の予備軍に位置づけられている貴重な植物でした。記者としては面目ない話です。開発が進むのに伴い、数を減らした湿地の植物ですが、昨秋、石巻市沿岸部の所々で花を咲かせました。津波で表土がかきまわされ、地中で眠っていた種子が芽を出したのではないかと言われています。
 
 床屋さんに出会った時も、そうでした。みなさまはお手元に『女川一中生の句 あの日から』をお持ちですか。これからお話しします床屋さんは「はしがき」の最後のページでご紹介した方です。
 
 初めてお見かけしたのは、2011年10月でした。「おながわ秋刀魚収獲祭」のフィナーレの踊り「さんまDEサンバ」に床屋さんも参加していました。ペットボトルのお手製のマラカスをゆすりながら、高々と足を上げ、声を出し、弾けるように踊っていました。お元気そう。よかった。その時、私はそう思ってしまいました。
 
 翌11月、再び、お見かけして、声をかけ、そして教えていただきました。ずっと打ちのめされていたことを。あの時、思いきり踊って、やっと立ち上がれたことを――。
 
 その11月に仮設店舗で仕事を再開しました。夫婦でお店を切り盛りしています。「おっとう」「おっかあ」と呼び合う夫妻にならって、ここからは、おっ父、おっ母、と書かせていただきましょう。今では私の行きつけの床屋さんです。

コメントの受け付けは終了しました。

    Author

    小野智美(おの さとみ)
    朝日新聞社員。1965年名古屋市生まれ。88年、早稲田大学第一文学部を卒業後、朝日新聞社に入社。静岡支局、長野支局、政治部、アエラ編集部などを経て、2005年に新潟総局、07年に佐渡支局。08年から東京本社。2011年9月から2014年8月まで仙台総局。宮城県女川町などを担当。現在、東京本社世論調査室員。


    ​*著書

    小野智美『50とよばれたトキ──飼育員たちとの日々』(羽鳥書店、2012年)
    小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(羽鳥書店、2012年)
    『石巻だより』(合本)通巻1-12号(2016年)

    Archives

    3月 2019
    12月 2018
    8月 2018
    7月 2018
    1月 2018
    11月 2017
    10月 2017
    9月 2017
    8月 2017
    7月 2017
    6月 2017
    5月 2017
    4月 2017
    3月 2017
    1月 2017
    12月 2016
    4月 2016
    3月 2016
    2月 2016
    1月 2016
    12月 2015
    10月 2015
    9月 2015
    8月 2015
    9月 2014
    8月 2014
    7月 2014
    5月 2014
    4月 2014
    3月 2014
    1月 2014
    12月 2013
    11月 2013
    10月 2013
    9月 2013
    8月 2013
    7月 2013
    6月 2013
    5月 2013
    4月 2013
    3月 2013
    2月 2013
    1月 2013
    12月 2012
    11月 2012
    10月 2012

    Categories

    すべて
    花屋さん一家と
    漁師さん親子と
    健太さんの家族
    女川だより 目次
    床屋さん夫婦と
    美智子さん姉妹
    祐子さんの家族

    RSSフィード

Copyright © 羽鳥書店. All Rights Reserved.