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​​東日本大震災(2011年3月11日)の震源地に最も近かった宮城県の牡鹿(おしか)半島。その付け根に位置する女川町を中心に、半島一帯を取材してまわる記者の出会いの日々を綴ります。老親の帰りを待つ人がいます。幼子の帰りを待つ人がいます。ここに暮らす人々の思いに少しでも近づけますように。──小野智美

第18便 祐子さんの家族<2> 指定席

6/17/2013

 

 女川港から国道を東へ約3キロ走ると、女川湾を望む高台に着きます。崎山(さきやま)公園と呼ばれ、滑り台やシーソー、ジャングルジムがありました。遊具だけ見れば、どこでも目にするような公園です。
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 津波は届きませんでしたが、地震で崩れる恐れが生じ、今は立ち入れません。女川町によると、全長110メートルにわたって、50センチから大きな所では1メートル幅におよぶ地割れが起こり、その幅と同じくらいの段差もできています。町は、崩れた地盤を取り除き、もう一度、公園を造れないかと考えています。
 
 私が「あの公園もなくなるそうですよ」と何気なく口にすると、祐子さんのご主人は「なくなるのか……」。しばらく次の言葉が出てきませんでした。
 思い出の場所なのです。
 
 祐子さんは町で生まれ育ちました。2人姉妹の姉です。両親の老後は、姉の自分が面倒を見なければと心に決めていました。両親にとって、なんでも相談できる頼もしい娘でした。結婚後、航空自衛隊員の夫の転勤に伴い青森県へ引っ越しましたが、松島基地の勤務に戻ると、両親の元へ夫と2人の子と共に帰ってきました。
 
 「ほんわかした雰囲気」
 祐子さんをご主人はそう描写します。聞き上手な妻でした。官舎でのご近所付き合いも、妻に任せれば、安心でした。おしどり夫婦でした。両親も子どもたちも夫婦げんかを見たことがありません。子どもにも「おらいのおっ父とおっ母はラブラブだものね」と言われるくらい。祐子さんは「そうだよ」と笑顔で応じていました。
 
 5月の大型連休。「花見に行くか」とご主人が言い出せば、「行く、行く」と祐子さん。家族みんなで出歩くのが大好きでした。夫がハンドルを握ります。運転免許をもたない祐子さんは助手席へ。子どもたちがそこに乗り込もうとすると、祐子さんは「だめだめ、そこは、おっ母の指定席」と制しました。後部座席に両親と2人の子を乗せて出発。車のナンバーは夫妻の結婚記念日です。子どもが小さいころ、よく出かけたのが、崎山公園でした。
 公園に寄った後は北へ。雄勝湾まで足を伸ばします。外出先では、おばあさんが「好きなの、食わいん(食べなさい)、食わいん」とみんなに食事やお茶をふるまいました。
 家族旅行はいつも6人一緒でした。

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    Author

    小野智美(おの さとみ)
    朝日新聞社員。1965年名古屋市生まれ。88年、早稲田大学第一文学部を卒業後、朝日新聞社に入社。静岡支局、長野支局、政治部、アエラ編集部などを経て、2005年に新潟総局、07年に佐渡支局。08年から東京本社。2011年9月から2014年8月まで仙台総局。宮城県女川町などを担当。現在、東京本社世論調査室員。


    ​*著書

    小野智美『50とよばれたトキ──飼育員たちとの日々』(羽鳥書店、2012年)
    小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(羽鳥書店、2012年)
    『石巻だより』(合本)通巻1-12号(2016年)

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